—— 今日はおふたりにぜひとも海外ファンタジー全般についても語っていただきたいのですが。ちなみに日本のファンタジーと海外ファンタジーの違いって、どのあたりにあると思われますか?
渡辺由佳里(以下、渡辺) 私は日本語の本をほとんど読まなくなっちゃったんですが、堺さんどうでしょう?
堺三保(以下、堺) もともとは日本の異世界ファンタジーも、『指輪物語』のような英米ファンタジーの影響下で登場してるわけですが、大きな違いと言えば、やはりキリスト教的な宗教観が日本にはないので、善悪二分論みたいなものがないというところでしょうか。
渡辺 そうですね。英語圏のファンタジーやSFにはキリスト教の影響が少なからずあるんです。無宗教の理念を語るものにしても、対立するものとして宗教がある。
堺 そうそう。
渡辺 そこから解放されている日本は、ある意味自由ですし、別の意味で書けちゃうというところもある。宗教の対立って、世界観としては重要な部分ですからね。
—— 『毒見師イレーナ』以外の有名作品で、その特徴が色濃く出ている例はありますか?
堺 たとえば『ライラの冒険』なんかは、過剰な一神教への反発のあらわれですし、逆に『ナルニア国物語』なんかはまさにキリスト教的な世界観のお話だし。
渡辺 そうそう! いまそれを言おうとしていたところ。そして、その『ナルニア国物語』を元にして作られたのが、『The Magicians』。これがすごく怖いファンタジーで、でもすごい世界観なんです。日本で翻訳されているのかな?
堺 まだ翻訳されていなかったと思いますね。
渡辺 そうですか、まだですか。面白いのに~! まあ、日本では受けないかもしれないなあ(笑)。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。