—— さて。ここまで、「ハーパーコリンズとはなんぞや?」というところから、英語圏の出版事情について語っていただきました。ハーパーコリンズの日本進出第一弾レーベル〈ハーパーBOOKS〉の創刊タイトル『毒見師イレーナ』に、渡辺さんは翻訳者として、堺さんは解説者としてたずさわっておられるんですよね? 渡辺さんは以前より、お嬢さんが本作のファンとのこと。
渡辺由佳里(以下、渡辺) そうなんです。娘が子供の頃から、私は、彼女と友人たちに、“本選びのコンシェルジュ”扱いされていたんですよね。「次はこういうの読みたいから選んでよ」と(笑)。『毒見師イレーナ』の原書『Poison Study』は、当時女子高生だった娘とその友人ふたりに「テストが終わったから、世界観が素晴らしくてロマンチックで冒険もあるファンタジーを読みたい」と依頼されて選んだもので、その3人組がじっくり読んでボロボロになった原書がうちにはあります(笑)。本作についてはブログ〈洋書ファンクラブ〉でも紹介していたので、翻訳ができたのは嬉しいことです! ところで解説された堺さんはこれ、読まれてどうでした? 率直なご意見お聞きしたかったんです!
読み込まれた『毒見師イレーナ』の原書
堺三保(以下、堺) 純粋におもしろかったですよ。ただ、アーシュラ・K・ル=グウィンが昔怒っていたように「ファンタジーの皮を被った現代小説」だって言われたら、反論しづらいかなあ?とも思いつつ。
渡辺 あはは! それはあるかも。全体的に最近のYAファンタジーはすべて「ファンタジーの皮をかぶった現代小説」なんですよね。
—— たしかに私も読みましたが、『毒見師イレーナ』、どこかファンタジーさを感じさせない妙なリアリティがありますよね。
堺 そうそう。でも、ジョージ・R・R・マーティンの『氷と炎の歌』のヒット以降、こういう作風が主流なんだよなあ、とも思っていて。私は肯定的にとらえています。
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